基礎生物学研究所
植物発生遺伝学研究部門
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葉を花に変える--ABCモデルの新たな展開

後藤 弘爾(岡山県生物科学総合研究所・室長)

日時:4月26日午後3時半より5時

場所:基生研1階会議室

要旨: 20世紀最後の10年間は、まさに花の発生遺伝学が花開いた時期ということができる。1990年代初頭に提案されたABCモデルは、植物の種を問わず多くの花に適用できることが実証された。A、B、Cの3つの遺伝子機能の組み合わせにより、がく片、花弁、雄ずい、心皮の4つの花器官の形成を制御するという、ABCモデルのもっとも美しい証明の一つは、A、B、Cすべての遺伝子機能を失った花器官は、葉になるということである。これは200年以上も前に、ゲーテが「花は葉のmetamorphosisによって出来た」といったことを彷彿とさせる。しかしながら、ゲーテの仮説を証明するには、逆に葉を花に変え得ることを示す必要があるが、これまで成功していなかった。

 今回我々はA、B、C3つの遺伝子機能に加え、花器官形成に新たな因子(SEP遺伝子)が必要であることを見つけた。さらにこのSEP遺伝子と、A、B、C遺伝子との組み合わせの異所的な発現によって、葉が花器官に転換することを示した。またSEP遺伝子も、ABC遺伝子群と同様、MADSボックス転写因子であった。このことと生化学的な解析から、花の形態形成においては、相同性を持つ転写因子群の複合体が、その組み合わせによって特異的にターゲット遺伝子の転写制御をするというモデルが考えられる。

文献:Honma, T. and Goto, K. (2001) Complexes of MADS-box proteins are sufficient to convert leaves into floral organs. Nature 409: 525-529.

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Characterization of the mammalian COP9 signalosome. -a novel regulation of c-Jun phosphorylation mediated by CSN1-

Dr. Tomohiko Tsuge

Dept. of MCDB, Yale University, New Haven CT 06520-8104, USA

日時:11月30日午後3時半より5時

場所:基生研1階会議室

COP9 signalosome is a large protein complex containing eightsubunits that is evolutionarily conserved from plants to animals.In plants, the complex is known to be a general developmentalrepressor. Although some subunits have been shown to regulatevarious cellular signaling processes, how each subunit executesthese activities as part of a multi-protein complex is not understood.

In this presentation, we demonstrate that transient expressionof mammalian CSN1 (COP9 signalosome subunit 1, GPS1) can inhibitc-fos expression in a transfected template or a chromosomaltransgene (fos-lacZ). Moreover, CSN1 blocks MEKK1 or UVstimulated phosphorylation of c-Jun at Serine 63, and suppressessignal activation of AP-1 promoter and SRE (serum-responsiveelement) promoter. In relationship of CSN1 to the complex, weshow that the C-terminal half of CSN1 encompassing the PCI domainis responsible for integration of the subunit into the complex;while transient expression of the N-terminal fragment lead toaccumulation of monomeric forms. The CSN1 N-terminal fragmentof 196 amino acids residues is unable to stably associate withthe complex, but it harbors the activity domain that is necessaryand sufficient to confer all of the repression functions of CSN1.Therefore, CSN1 possesses an autonomous activity at its N-terminaldomain that mediates suppression of c-Jun phosphorylation andof stress and growth factor stimulated gene expression.

We are currently isolating proteins interacting with the N-terminalfunctional domain to further understand the biological functionsof CSN1.

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光環境への葉と葉緑体の分化〜光認識部位の解析〜

矢野 覚士(大阪大学・大学院・理学部・生物科学)

日時:12月6日午後2時より3時半

場所:基生研1階会議室

 陸上植物は生育する光環境に応じて,陽葉と陰葉を形成する。現在までに,陽葉と陰葉を生理学的,生態学的に比較した研究が数多く行われてきたが,その発生・分化過程,特にその制御機構を解析した研究は数少ない。陽葉化,陰葉化においては光環境を認識することが非常に重要である。しかしながら,現在までこれらの現象に関わっている光認識機構の解析は行われていなかった。このため,まず光を認識している部位を,植物に部分被陰処理をすることによって調べた。

 また,陸上植物は,光環境に応じて葉緑体の形態を変化させ,強光下でsun-type,弱光下でshade-typeと呼ばれる葉緑体を形成する。今回我々は,こうした葉緑体の分化に成熟した葉における光環境が関わっているのかどうかも検証した。

 茎頂部分のみを強光条件にしたとき(下位葉は弱光条件,High-light Apex [HA]処理)に形成される葉と,茎頂部分のみを弱光条件にしたとき(下位葉は強光条件,Low-light Apex [LA] 処理)に形成される葉の形態と葉に含まれる葉緑体の形態を観察した。その結果,葉の形態としてはHA 処理で陽葉,LA 処理で陽葉が形成されていた。またHA 処理ではsun-type,LA 処理ではshade-typeの葉緑体が形成されていた。

 このため,葉の分化には成熟した葉の光環境が影響を与えており,葉緑体の分化には局所的な光環境が影響を与えているといえる。よって,成熟した葉における光環境は,新しく形成される葉の形態を支配するが,その葉緑体の分化には影響を与えていないと考えられる。

URL:
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/terashima/person_folder/yano/yano_j.html

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シロイヌナズナ種子でのABA感受性の遺伝学

南原英司博士(理化学研究所・植物科学研究センター)

日時:1月30日午後2時より3時半

場所:基生研1階会議室

 高等植物の種子の発芽は、吸水後に速やかに起こる場合があればそうでない場合もある。種子は自己の生長を積極的に抑制する機構を持ち合わせており、不適な環境の中では吸水後もそのまま寝続けることもある。この種子の眠りは植物ホルモンであるabscisic acid (ABA)によって促進される。シロイヌナズナを用いた遺伝学的な研究から、種子休眠は、ABAの量とABAの情報伝達因子、および、ABA非依存的な調節タンパク質などが関与することが明らかになってきている。シロイヌナズナを使った突然変異株の選抜・解析から、種子でのABA感受性に関わる正の調節遺伝子(ABI3, ABI4, ABI5)と負の調節遺伝子(ERA1, ERA3, ABI1, ABI2)などがクローン化されている。これら遺伝子の解析から分かってきている事を中心に話をしたい。

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フィトクロムによる植物の光形態形成の制御

長谷 あきら(京都大学大学院理学研究科)

日時:11月21日午後3時より5時

場所:基生研1階会議室

 フィトクロムは分子量約12万の色素タンパク質で、赤・遠赤色光の光受容体として植物の様々な光応答反応を制御している。我々は、フィトクロムのシグナル伝達機構に関する研究を行ってきた。フィトクロムは水溶性のタンパク質で、長い間、細胞質で働くと考えられていた。我々は、フィトクロムのC-末端側領域が核移行活性を示すことを見いだした。そこで、フィトクロムの主要な分子種であるphyBについて、GFPとの融合蛋白質(phyB-GFP)を構築し、シロイヌナズナのphyB変異体で発現させた。得られた植物ではphyB欠損表現型からの回復が認められ、phyB-GFPが正常な生理活性を持つことが分かった。次に、この植物の芽生えで蛍光顕微鏡観察を行ったところ、phyB-GFPは、暗所では細胞質に局在し、赤色光刺激を受けると数時間以に核内に移行した。このような性質を示す光受容体は、これまで全く知られておらず非常に興味深い。また我々は、器官間のシグナル伝達についても研究を進めている。まず、光に応答するエンハンサー・トラップ系統を用いて、子葉のphyBが胚軸下部の遺伝子発現を制御すること、さらに、子葉から胚軸へのシグナル伝達に植物ホルモンであるオーキシンが関与することを見いだした。次に、phyB-GFPをエンハンサー・トラップ法の原理を用いて様々な器官・組織で発現させ、これらを用いて、胚軸伸長は子葉の葉肉細胞のphyBと地上部維管束周辺の細胞のphyBにより二重に制御されていることを見い3だした。この研究により、異なる組織の光受容体がよく似た個体レベルの生理応答を引き起こしうることが初めて明確に示された。

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PTGS植物とRNAi植物

児玉 浩明(千葉大学・園芸学部・生物化学研究室・助教授)

日時:3月18日(火)午後3時半より5時

場所:基生研4階情報研修室

 形質転換植物で観察される PTGS(Post-transcriptional Gene Silencing)では、導入遺伝子の発現が転写後に抑制される。PTGS では導入遺伝子と同じ塩基配列を持つ内在性の遺伝子の発現も抑制されるため、mRNA の塩基配列が認識され、同じ塩基配列を持つRNA が分解されることで発現抑制が生じると考えられている。一方、RNAi(RNA interference)は1998 年に線虫で初めて観察された遺伝子発現抑制現象である。2本鎖RNA 分子を細胞に導入すると、導入したRNA と同じ塩基配列を持つRNA の発現が強く抑制される現象である。その後、PTGS/RNAi に必須な遺伝子群が同定され、その一部に相同性が認められる遺伝子が見つかったことから、共通の分子機構が想定されている。その一方で必須とされる遺伝子がなくとも、生物種によってはRNAiが生じるものがあり、RNAiの分子機構にバリエーションがあることも明らかになりつつある。

 一方で、PTGS として過去に報告された事例の中には、同じ塩基配列を持つ RNA 分子種を分解するという基本的なRNAi の分子機構のみでは説明が難しいものもある。演者はこれまで、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の PTGS について研究を進めてきた。小胞体局在型 w-3 脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の遺伝子産物は、リノール酸からa-リノレン酸への変換を行う。過剰発現を狙って作出した形質転換タバコの多くは野生株よりもa-リノレン酸含量が増加したが、PTGS により野生株よりも大幅にa-リノレン酸含量が減少した系統が得られた。この系統では RNA スプライシングおよび翻訳の段階で抑制的な制御が働いていることを示唆するデータが得られており、遺伝子の種類によっては植物の PTGS が、転写後の多段階からなる抑制的な制御機構により成立していることを示唆している。今回はこのような観点から、実際にRNAi植物とPTGS植物とを比較し、その違いについて考察したい。

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「遺体科学の明日」

遠藤 秀紀(国立科学博物館)

日時:10月14日(火)午後3時半より5時

 解剖学は昔から動物の遺体を徹底的に収集してきた。本来収集に先んじて研究目的が存在している訳ではなく、「遺体は解剖学者が生命をかけて集め続けるもの」とされてきたはずである。だが時は移ろい、“解剖学者”は遺体に見向きもしなくなった。還元主義に凌駕されたと自己評価を限定した解剖学者が、表現型に関心をもたなくなったからである。一瞬にして遺体集めは下賎の生ゴミ収集作業と同一視されるようになった。21世紀初頭の“解剖学者”のごく普通の姿は、遺体に唾を吐き、何かほかのことでインパクトファクターを得、まるで小学生の算盤教師のごとく学生に“解剖学”を披露する、理念も世界観も無い労働者のそれである。

 一方、国策科学や環境行政が、何億円もの金を手に、遺体の前に姿を見せるようになった。社会教育にも健全なゾーロジーの発展にも、アカデミズムのあるべき姿にもましてやナチュラルヒストリーの未来にも、何の問題意識ももち得ない衆に、権力が資力を与えていく。そして彼らはゲノムを収奪する植民地支配者として遺体の周辺を歩きまわり、本物の解剖学者を見て右往左往をし始める。傍らで力なき遺体の持ち主たちは、突然現われた葬儀場泥棒に困惑する以外に、自分のアイデンティティを発揮することはない。

 私は、自分が古いタイプのアカデミズムの人間だと認識している。そして「遺体科学」を立ち上げている。そこには「遺体をアカデミズムに残すためなら、喜んで死ねる自分」がいる。いつの間にか遺体科学は、おそらく恥ずかしくないだけのオリジナリティを科学の世界に提供し始めているだろう。

 今日は遺体と接する私の生き様を見ていただければ幸いである。そういう私の日々をつまみに、楽しい現場の話が進めばなお楽しい。私の願いはただ一つ。遺体に関心をもつすべての人間に、遺体と学問の未来を真剣に問いかける能力と意志を備えて欲しいということである。

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「遺伝子の繰り返し領域と進化・疾病」

石浦 章一(東京大学大学院総合文化研究科・教授)

日時:6月17日(木)午後3時半より5時

場所:基生研1階会議室

  ヒトのゲノムが解読されたとき、驚くべきことが明らかになった。私たちヒトゲノムの約半分が、一見無意味な反復配列から成り立っていたのである。LINE(long interspersed nuclear element)と呼ばれる6から8kbの繰り返しはゲノムの21%を、約280bpのAlu配列を含むSINE(short interspersed nuclear element)は13%を占める。この他に、レトロウイルスのような要素、数十塩基繰り返しのVNTR(variable number of tandem repeat)、個人識別に用いられる超可変ミニサテライト、数塩基の繰り返しのマイクロサテライト、そしてTTAGGGの繰り返しのテロメアなどがあるが、これら遺伝子の繰り返し領域には、ほとんど機能がないと考えられていた。

 しかし、ヒトのゲノム構造が明らかになるにつれ、繰り返しが意味を持つものがあることがわかってきた。例えば、3塩基の繰り返しが伸長すると発病するものがあり、トリプレット・リピート病としてにわかに注目を集めるようになった。この中には、翻訳領域のリピートが伸長して新規ポリアミノ酸が細胞死を導くもの(1)、非翻訳領域のリピートが伸長してそこに特定の蛋白質が結合し機能が変化するもの(2)などがあり、いろいろなメカニズムで発病することがわかってきた。

 私たちの研究室で行われた20種類のアミノ酸全部を伸長させて発現する人工的な系を用い、タンパク質の機能と細胞死との関連を紹介したい。ここには、ゲノムの進化という新しい側面もうかがわれ、新しい進化概念を提唱したい。

    参考文献
  1. Oma, Y., Kino, Y., Sasagawa, N. & Ishiura S. (2004) Intracellular localization of homopolymeric amino acid-containing proteins expressed in mammalian cells. J.Biol.Chem. 279, 21217-21222
  2. Kino, Y., Oma, Y., Sasagawa, N. & Ishiura, S. (2004) Muscleblind protein, MBNL1/EXP, binds specifically to CHHG repeats. Human Mol.Genet. 13, 495-507
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「オオバコの生物学=その現代的見直し=」

基礎生物学研究所・共同利用研究研究会(課題番号4-302)

日時:7月 3日(土)

場所:岡崎コンファレンスセンター小会議室(愛知県岡崎市明大寺町字伝馬8−1)

世話人:荒木崇(京大・院・理)塚谷裕一(基生研/岡崎統合バイオ;総研大;京大・院)

プログラム:
13:00-13:10・荒木崇・塚谷裕一 この研究会の趣旨について<

講演I(座長:荒木 崇)
13:10-13:30
・Chan-Ho PARK(東大・院・進化多様性)「韓国産オオバコ属の分類学的研究」
13:35-13:55
・岩坪美兼・山崎貴博(富山大・理・生物)「日本産オオバコ属の核型および種内倍数性と形態」
14:00-14:20
・中山祐一郎(大阪府大・院・農学生命科学研究科)「神社仏閣境内の矮小型オオバコ」
14:25-14:40
・池田博(岡山理科大・総合情報)・塚谷裕一「アジアのオオバコの倍数性と核型」

14:45-15:00(休憩)

講演II(座長:塚谷 裕一)
15:00-15:15
・今市涼子(日本女子大)「オオバコと矮小変種ヤクシマオオバコの茎頂と葉原基の比較形態」
15:15-15:45
・石川直子(自然科学研究機構・基生研)・塚谷裕一「オオバコ矮小形質のメカニズム」
15:45-16:00
・荒木崇(京大・院・理)「生殖開始サイズの遺伝制御メカニズム」
16:00-16:25
・堀口吾朗(基生研/岡崎統合バイオ)・塚谷裕一「シロイヌナズナにおける葉のサイズの遺伝制御メカニズム」

16:30-16:50(休憩)

総合討論
16:50-18:00
1.オオバコという種の範囲をめぐって
2.矮小形質のメカニズムをめぐって

18:30- 懇親会

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「自殖生物シロイヌナズナができるまで〜ダーウィンの仮説への分子集団遺伝学からの解答〜」

清水 健太郎(ノースカロライナ州立大学遺伝学教室 / 京都大学大学院理学研究科植物学教室)

日時:8月19日(木)午前11時より12時半

場所:基生研1階会議室

 ゲノム科学の進展により、生態・進化学で扱われてきたような個体間相互作用を、分子レベルから解明する素地が整ってきている。自分自身を交配相手とする「自殖」という現象は、近交弱勢の害があるにもかかわらず、シロイヌナズナや線虫を初め多くの生物に見られる。1876年にチャールズ・ダーウィンは膨大な自殖実験をもとに、生物が新天地に広がって、周囲に交配相手や送粉者が少ない際には、自殖が有利になって自然選択を受けるという「繁殖保証仮説」を提案した。

 本セミナーでは、シロイヌナズナ21系統からのシークエンスを用いた分子集団遺伝学によりこの仮説を検証する。

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「風土と虫と人の文明」

奥本 大三郎(埼玉大学教養学部・教授)

日時:9月 7日(火)午後1時半より3時

場所:基生研1階会議室

  世界の各地で虫や鳥の色や形はどのように異なっているか。また、そこに棲む人間の文明にはどのような違いがあるかについて、実例をあげながら論じる。


***************

奥本先生ご略歴:

 昭和19年生まれ、東京大学仏文科卒。東京大学大学院博士過程中退。横浜国立大学講師・助教授を経ていったんご退職。平成2年4月より埼玉大学教養学部教授。現在に至る。

奥本先生は本業が仏文学者(専門はランボーなど)、かつ現在、日本のエッセイスト界を代表する一人です。蝶愛好家であることから、ファーブル昆虫記の全訳にも取り組んでおられ、現在継続刊行中のファーブル昆虫記(集英社文庫)が、そのライフワーク。『虫の宇宙誌』(青土社)で読売文学賞受賞、『楽しき熱帯』(集英社)でサントリー学芸大賞受賞。現在はむしろ各種文学賞の選考委員としてご活躍中です。

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水生異型葉植物 Ludwigia arcuata から探る葉形制御のしくみ

桑原 明日香(東京大学大学院理学系研究科)

日時:4月 12日(火)午後3時より4時半

場所:職員会館2階・大会議室

 近年、シロイヌナズナなどを用いた遺伝学的な解析から、葉形の決定に関わる遺伝子がいくつも同定され、葉形決定についての知見は増えつつある。一方私は天然に存在する、水没によって葉形変化が誘導される水生異型葉植物(アカバナ科、Ludwigia arcuata)を用い、葉形制御のしくみについて生理学的、形態学的な手法を用いて解析を行ってきた。

 水没による葉形変化の際には、植物は水没という環境変化を感知し、このシグナルが葉の形態形成のプログラム変更をもたらし、結果として葉形変化が起こると考えられる。生理学的な解析から、水没から葉形変化に至るまでの経路には植物ホルモンのエチレンとアブシジン酸(ABA)の拮抗的な相互作用が関与することが明らかになった。また、形態学的な解析からは葉の形態形成が開始した後でも葉の基部の部分ではある程度の葉形変化が可能であること、すなわち可塑的な葉の形態形成を行うことが明らかになった。

 28℃条件下では L. arcuata の葉形変化は葉の横軸方向に配列する表皮細胞の数に依存して起こるため、可塑的な葉の形態形成には、葉の横軸方向に配列する表皮細胞の数の制御が関わっていると考えられる。そこで、葉の中の細胞の配置の決定には、細胞の分裂方向とその頻度が重要な役割を果たすのではないかと考え、細胞分裂に着目して解析を行った。その結果、葉形変化が起こる際には細胞分裂活性とその分裂方向が顕著に変化し、この変化はエチレンによって誘導されることを発見した。

 また栽培環境の検討から、L. arcuata は栽培温度によって葉形変化の様式が大きく異なることを見出した。具体的には、28℃で栽培すると、葉の横軸に並ぶ表皮細胞の数に依存した葉形変化が起こるが、23℃で栽培した水中葉では葉の横軸に並ぶ細胞数の変化に加えて、葉の長軸方向への表皮細胞の著しい伸長が観察された。この、温度条件の変化を利用して細胞伸長を誘導した際にも、可塑的な葉の形態形成が観察されているので、これについてもあわせて報告したい。

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キャベツはなぜ巻くか?

田中 紀史(株式会社トーホク 育種部)

日時:5月 26日(木)午後2時半より4時

場所:基生研1階会議室

 キャベツはシロイヌナズナと同じアブラナ科に属し、今日世界で2番目に多く栽培されている重要な野菜である。キャベツの属する Brassica oleracea には花芽を食するブロッコリーやカリフラワー、肥大化した茎を食するコールラビーー、葉色や葉の形態変異を鑑賞するハボタン、青汁の原料として知られるケールなどが含まれ、何れもそのケールを祖先種として分化してきたと考えられている。

 キャベツの存在価値は“結球性”と呼ばれるその特異的な形態を獲得したことにある。キャベツ個々の結球葉が内側に湾曲している形状から、結球性に葉の湾曲が重要であろうことが容易に想像できる。しかし、実際キャベツ以外の B. oleracea に属する他の作物を観察すると何れにも葉の湾曲する系統が存在し、キャベツに特異的な現象ではない。ではどの様な変異がキャベツの結球性に必要だったのか。キャベツの葉はハボタンやケールが縦長の葉形であるのに対し、葉位が高くなるに従って葉柄が短く幅広の葉形に発育する。そこでキャベツ × ハボタンあるいはキャベツ × ケールの F2 集団を作成し観察すると、結球する個体から非結球の個体まで連続的な変異を示した。一方、葉形も連続分布を示し、よりうまく結球する個体は幅広の葉形に発育する傾向があった。このことは祖先種のケールから上記の遺伝的な葉形変異の発育プログラムを獲得したものがキャベツになったことを示唆する。更に、キャベツだけとってみても播種後90日前後で収穫できる早生から、200日前後かかる晩生のものまで非常に変異に富んでいる。本セミナーでは、キャベツ × ハボタン或いはキャベツ × ケールのようなダイナミックな交雑から分かってきた葉形変異の重要性について、或いは早晩性の異なるキャベツの交雑から分かってきた葉形変異と育種上重要な早晩性や結球部の形状との関係についてお話ししたい。

キャベツ写真 ブロッコリー写真 カリフラワー写真 ハボタン写真 ケール写真
キャベツ ブロッコリー カリフラワー ハボタン ケール
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基礎生物学研究所研究集会
「ヒマラヤ・日華植物区ー植物相・植生の比較解析ー」

日時:2005年5月28日(土)

会場:自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 基礎生物学研究所 岡崎コンファレンスセンター

プログラム:
9:00 開場、受付
9:30〜12:30 研究発表(午前)
○挨拶・研究会の主旨 塚谷裕一(基礎生物学研究所)

  1. 大場秀章(東京大学総合研究博物館):ヒマラヤ・日華植物区の植物相研究史
  2. 田中孝尚・山本俊哉・能城修一・鈴木三男(東北大学、果樹研究所、森林総合研究所):SSRマーカーによるクリ (Castanea crenata) の遺伝的多様性について
  3. 菅野宗武(東北大学):日本産コナラ属コナラ節4種とモンゴリナラ(東海丘陵要素)の遺伝的関係
  4. 高山晴夫(鹿島研究所):乾燥地の山岳森林における水分条件
  5. 菊池多賀夫(前横浜国立大学):ヒマラヤの高山帯植生の性格
12:30-13:30 昼食
13:30-15:00 研究発表(午後)
  1. 美和秀胤(京都大学):分子情報を活用したコケ植物の種の認識と多様性
  2. 五百川裕(上越教育大学):ネパール王国ムスタン地域の植物
  3. 秋山 忍・御影雅幸(国立科学博物館、金沢大学大学院):2004年ロシア沿海州植物調査

15:00-16:00 ポスター発表およびヒマラヤ高山植物写真展(吉田外司夫)

  1. 渡辺高志・吉川孝文・矢原正治・吉田昇平・Kuber J. Malla(北里大学薬、熊本大学大学院薬、Dept. of Plant Resources):ネパール王国アッパームスタンにおける薬用資源の調査研究(3)ヒマラヤ産ローズヒップ (Rosa sericea) に関する研究
  2. 秋山 忍(国立科学博物館):Impatiens に関する新知見
  3. 池田 博・山本伸子・秋山 忍・塚谷裕一・大場秀章・M. モハメッド・D. ダルナエディ(岡山理科大学、国立科学博物館、基楚生物学研究所、東京大学総合研究博物館):ジャワ島およびボルネオ島産ツリフネソウ属植物1新種、5種の核型、および雑種形成
  4. 能城修一(森林総合研究所):縄文時代以降におけるウルシの出土
  5. 藤川和美(高知県立植物園):ミャンマー・ナマタン国立公園の植物
  6. 毛利千香(金沢大学植物園):シカ食害がメギ成分ならびに樹皮組織におよぼす影響
  7. 木場英久(神奈川県立生命の星地球博物館):ネパール産種子植物標本・画像データベースの現状と課題
16:00 終了(あいさつ)
16:10〜17:30 第42回ヒマラヤ植物研究会
  1. ネパール植物誌 Flora of Nepal 編纂報告
  2. Flora of Nepal Database 進捗報告
  3. 2005年度現地調査派遣に関する報告および審議
  4. 第11回標本整理会報告
  5. ヒマラヤ植物研究会運営会議(事業報告・会計報告など)

18:00〜 懇親会
5月29日(日)
8:30〜15:00 エクスカーション(岡崎市内の北山湿地、小呂湿地)
◎岡崎市を通して湿地(私有地)見学の許可を得ました。採集はできません。
15:00 終了・解散

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基礎生物学研究所重点共同利用研究・研究会
植物の分裂組織 =その研究の盲点と残された課題=

日時:2005年10月5日(水)〜10月6日(木)

会場:岡崎コンファレンスセンター

プログラム
10月5日
12:55田坂 昌生(奈良先端大)挨拶と連絡
− 座長:後藤 弘爾 −
1:00佐藤 豊(名大)イネを材料にした研究から考える植物のシュート形成機構
1:30森上 敦(名城大)DNA障害修復系遺伝子欠損株におけるメリステムの構造異常
2:00相田 光宏(奈良先端大)シュート器官の境界部の確立と分裂組織の形成について
− 座長:深城 英弘 −
2:30小山 知嗣(産総研)境界領域の形成を制御する転写因子
3:00経塚 淳子(東大)腋芽メリステムの形成--その開始と維持を制御する機構の理解をめざして--
3:30-3:45コーヒーブレイク
− 座長:経塚 淳子 −
3:45平野 博之(東大)イネの花分裂組織の維持制御 -- 保存性と独自性
4:15後藤 弘爾(岡山生物研)花芽形成におけるcell layer間の相互作用
4:45杉山 宗隆(東大)原基形成・分裂組織形成に通底する細胞増殖統御の基本機構を求めて
− 座長:相田 光宏 −
5:15中島 敬二(奈良先端大)シロイヌナズナの根端分裂組織においてパターン形成に関与する遺伝子群の同定
5:45深城 英弘(奈良先端大)側根分裂組織形成におけるオーキシンの役割
6:15犬飼 義明(名大)イネの冠根原基形成機構
7:00懇親会
 
10月6日
− 座長:上野 宜久 −
9:00長谷部 光泰(基生研)分裂組織の進化
9:30"藤田 知道(北大) 、日渡 祐二(基生研)"幹細胞、非幹細胞を生み出すヒメツリガネゴケプロトプラストと頂端細胞の不等分裂解析
10:00柿本 辰男(阪大)分泌ペプチド因子によるメリステモイドの制御
10:30-10:45コーヒーブレイク
− 座長:吉岡 泰 −
10:45梅田 正明(東大)幹細胞の形成・維持におけるCDK活性の役割
11:15伊藤 正樹(名大)植物の細胞周期を制御するMyb転写因子
11:45堀口 吾朗(基生研)葉原基における有限細胞増殖の制御系と葉のサイズ決定機構
12:15-1:30昼食西村斑(討論会)
− 座長:藤田 知道 −
1:30池崎 仁弥(名大)シロイヌナズナの asymmetric leaves1 とasymmetric leaves2変異体におけるクラス1 knox ホメオボックス遺伝子の役割
2:00上野 宜久(名大)シロイヌナズナASYMMETRIC LEAVES2によるmicroRNAの制御と葉の極性の確立
2:30"松本 任孝(京大) 、土田 裕平 、渡辺 恵郎"器官発生における軸形成および領域化の分子メカニズムの解析
3:00-3:15コーヒーブレイク
− 座長:梅田 正明 −
3:15伊藤 純一(東大)イネにおける葉の発生とその諸問題
3:45吉岡 泰 (名大)葉緑体の分裂・分化と茎頂分裂組織形成との関連
4:15石黒 澄衞(名大)茎頂分裂組織におけるSHEPHERDタンパク質の機能
4:45塚谷 裕一(東大)挨拶
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Meristems and polarity in land plants

Dr. John L. Bowman (Section of Plant Biology, University of California Davis)

日時:11月 8日(火)午後2時より3時半

場所:基生研1階会議室

 このたび、花のABCモデルと葉の背腹性のYABBYで有名なJohn Bowman博士が来日されたのを機に、植物の体制の決定機構とその進化とについて、ご講演をお願いしました。John Bowman博士は、ご存知のように、大学院生時代に、花器官のアイデンティティー決定に関する有名なABCモデルを完成させました。その後、現在に至るまでに、葉の背腹性(裏表)決定因子であるYABBY遺伝子ファミリーやクラス3のHD-ZIP遺伝子ファミリーなど、植物の器官のアイデンティティー決定に関する重要な因子を次々と発見されています。またそれと平行して、ナチュラリストとしての側面から、それらの遺伝子が植物の形態の進化にどのように関わってきたか、というエボデボ的な研究も進めておられます。この機会に、ご自身の研究成果に基づく最新の知見について、セミナーをしていただけることとなりました。どうぞふるってご参加ください。

Shoots of all land plants have a radial pattern which can be considered to have an adaxial (central) -- abaxial (peripheral) polarity. In Arabidopsis, gain-of-function alleles of PHAVOLUTA and PHABULOSA, members of the class III HD-ZIP gene family, result in adaxialization of lateral organs. Conversely, loss-of-function alleles of the KANADI genes cause an adaxialization of lateral organs. Thus, the class III HD-ZIP and KANADI genes comprise a genetic system that patterns abaxial-adaxial polarity in lateral organs produced from the apical meristem. We show that gain-of-function alleles of REVOLUTA, another member of the class III HD-ZIP gene family, are characterized by adaxialized lateral organs, and alterations in the radial patterning of vascular bundles in the stem. The gain-of-function phenotype can be obtained by changing only the REVOLUTA mRNA sequence, without changing the protein sequence, indicating that this phenotype is likely mediated through an interference with microRNA binding. Loss of KANADI activity results in similar alterations in vascular patterning as compared to REVOLUTA gain-of-function alleles. Simultaneous loss-of-function of PHABULOSA, PHAVOLUTA and REVOLUTA abaxializes cotyledons, abolishes the formation of the primary apical meristem, and in severe cases, eliminates bilateral symmetry, implicating these three genes in radial patterning of both embryonic and post-embryonic growth. Based on complementary vascular and leaf phenotypes of class III HD-ZIP and KANADI mutants, we propose that a common genetic program dependent upon miRNAs governs adaxial-abaxial patterning of leaves and radial patterning of stems in the angiosperm shoot implying a common patterning mechanism is shared between apical and vascular meristems.

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How is cell size controlled in plants?

Dr. Keiko Sugimoto (Department of Cell and Developmental Biology, John Innes Centre)

日時:5月24日(水) 14:00-16:00

場所:基礎生物学研究所 第1会議室

Why cells end up at the size they do, still remains an important biological mystery. Cell size is controlled by highly regulated processes with inputs from genetic, hormonal and environmental cues. One cellular strategy to allow a large increase in cell size is to amplify chromosomal DNA to increase the ploidy level within a cell. This can be achieved, for example, through endoreduplication, the replication of chromosomes without corresponding cell divisions. Using Arabidopsis as a model system, my laboratory aims to understand how plant cells endoreduplicate and how an increase in the ploidy level leads to an increase in cell size. In a search for mutants deficient in endoreduplication, we found three sets of dwarf mutants: root hairless 1, 2, 3 (rhl1, rhl2, rhl3), hypocotyl 6, 7 (hyp6, hyp7) and brassinosteroid insensitive 3, 4, 5 (bin3, bin4, bin5). Unlike wild-type seedlings, in which some cells undergo four rounds of endoreduplication and reach 32C, these mutants complete only the first two endocycles and stall at 8C. By positional cloning, we found that RHL2/BIN5 and RHL3/HYP6/BIN3 encode plant homologs of the archaeal DNA topoisomerase VI (topo VI) subunits A and B, respectively, whereas both RHL1/HYP7 and BIN4 encode plant specific nuclear proteins. Subsequent yeast-two hybrid interaction studies showed that RHL1, BIN4 and topo VI subunit A interact in vivo, suggesting that RHL1 and BIN4 are crucial components of the plant topo VI complex. Archaeal topo VI can perform DNA decatenation, the ATP-dependent separation of two entwined DNA molecules, and DNA relaxation, the removal of DNA supercoils that can arise during DNA replication. Our current hypothesis is that the plant topo VI complex ensures efficient DNA replication during endoreduplication. This study illustrates that maintaining the physical integrity of chromosomal DNA is essential for successive endocycles in Arabidopsis.

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DNA topoisomerase VIがシロイヌナズナの核内倍加現象に必須であることの証明(CURR BIOL 12 (20): 1782-1786 OCT 15 2002;PROC NATL ACAD SCI USA 102 (51): 18736-18741 DEC 20 2005)以来、このジャンルの第一線でご活躍の杉本博士が一時帰国されました。この機会に、核内倍加現象と植物のサイズ制御、トポイソメラーゼとの関係についてご講演いただけることとなりましたので、ふるってご参加下さい。

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