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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

修了生の声

修了生の声 後藤志野さん (高次細胞機構研究部門 研究員)

 

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 私は5年一貫制博士課程の総研大生として基生研・西村研究室(高次細胞機構研究部門)にやって来ました。西村研では、生きた細胞をリアルタイムで観察できるバイオイメージングに力を入れているのですが、共焦点や蛍光顕微鏡など高価な顕微鏡がズラリと並ぶ光景に大変驚いた記憶があります。そんな西村研での初めての実験は、ミトコンドリアやペルオキシソームといったオルガネラが、GFPによって可視化されている形質転換植物の観察でした。渡された形質転換体を蛍光顕微鏡で覗き込むと、そこにあったのは、プラネタリウムの星々のようなオルガネラ達の輝きでした。しかも、オルガネラひとつひとつが動き回り、流され、時には塊となって細胞の中を忙しく行ったり来たりしているのです。このような刺激的な経験によって、私は細胞生物学の魅力にはまっていったのです。

 

 当時、西村研には学生は二人しかいませんでした。それに対して教授などスタッフの数は倍以上。実験の手ほどき、論文作成の指導についてはしっかり受けられ、非常に恵まれた学生環境だったと思います(その後は学生も徐々に増え、それはそれで良い刺激になりました)。一方で、興味を持ったテーマを学生が自主的に進めることが許されており、その過程で研究を推進する能力を身につけることができたと感じています。

 

 2年目と4年目には、大勢の先生方を相手に研究の進捗状況を発表する、「生命科学プログレス」という場が設けられます。ここでは厳しい質問、そして非常に有益なアドバイスを頂くことができました。質問はひっきりなしにやって来て、2時間程ヘトヘトになりながらしゃべり続けることになりました。しかし、ここでのディスカッションの成果が研究の進展につながったことも事実です。また、4年目には、基生研と共同研究協定を結んでいるドイツのEMBLという研究所に訪問する機会を頂きました。EMBLではヨーロッパ中の学生が集まるシンポジウムが開催されており、同じ立場の学生達が活発に英語で議論する光景を目の当たりにし、世界の広さ、そして英語でのコミュニケーションの重要さを痛感しました。同時に、英語でコミュニケーションが取れるようになれば世界のどこにだって行ける、と実感し、その後の英語学習に身が入るようになりました。

 

 このような素晴らしい環境で私は無事に博士号を取得し、現在、同じ研究室で研究員として働いています。1年前に長男を出産しましたが、研究所敷地内には保育園があり、産休後はスムーズに研究に復帰することができました。そして研究室メンバーの暖かい理解のおかげで、仕事と家庭を両立できています。近い未来、基生研から外へ飛び出して行くことになると思いますが、これまで受けた恩恵をお返しできるよう、研究に専念していきたいと思います。

 

(2015年 3月記)