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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター 宇宙生命探査プロジェクト室 藤田グループ

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研究の概要

生命における秩序の創発

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自然界は様々な時空間構造に満ちており、これらは自己組織的な秩序創発により生み出されている。このことはとりわけ生物において顕著であり、生命は自己組織的な時空間パターンの宝庫である。この秩序創発は生命の誕生まで遡ることができ、生命はその誕生および複雑化の過程において、様々な秩序創発現象を順次取り込み進化してきた。本研究グループでは、このような生命における秩序創発現象を、実験的手法と数理的手法の協働により理解することを目指している。

細胞集団による時空間的自己組織化の創発

単細胞バクテリアである大腸菌は鞭毛を用いることにより水中を遊泳でき、栄養濃度の高い方に移動する性質(走化性)を持っている。この性質により、大腸菌は細胞集団として秩序だったコロニーパターンを形成することができる(上図左、図1)。このパターン形成に対して合成生物学的手法を適用することにより、よりダイナミックな時空間的自己組織化の創発を目指している。一例として、培地上を自由に徘徊する細胞集団 "大腸菌ナメクジ" の創出を試みている。

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図1.大腸菌細胞集団による自己組織的パターンの創発

植物における自己組織的パターン形成

生物は時として驚くほど美しく秩序だった空間構造を作り出すが、その代表的な例として植物の葉序が挙げられる。葉序は茎の周りの葉の配置様式のことで、美しい幾何学的模様を生み出す(上図中左)。一方で、植物の葉に形成される維管束のことを葉脈と呼び、植物種に応じて多様なパターンをとることが広く知られている(上図中右、図2A)。これらパターンは、植物ホルモンAuxinとその膜輸送体PIN1との相互制御により自己組織的に形成されるが、興味深いことに葉序と葉脈とではその制御機構が異なっている(図2、文献1, 3, 4)。また、植物の地上部組織は、茎の先端にある分裂組織(SAM)により生み出されるが、SAMの制御異常により "帯化" のような地上部の奇形が引き起こされる(上図右)。SAM制御には、転写制御因子WUSと拡散性ペプチドCLV3との相互制御が重要であることが知られている(図2B、文献2, 4)。本研究室では、このような生命の自己組織的な秩序の形成・制御機構を理解することを目指している。

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図2.葉脈パターンと茎頂分裂組織(SAM)パターンの形成・制御
AuxinとPIN1の相互制御の数理モデルにより多様な葉脈パターン(A)が、WUSとCLV3の相互制御の数理モデルにより多様な茎頂分裂組織(SAM)パターン(B)が再現できる(文献1–4)。

研究室関連資料

参考文献

1. Fujita, H., and Kawaguchi, M. (2018). Spatial regularity control of phyllotaxis pattern generated by the mutual interaction between auxin and PIN1. PLoS Comput. Biol. 14, e1006065.
 
2. Fujita, H., Toyokura, K., Okada, K., and Kawaguchi, M. (2011). Reaction-diffusion pattern in shoot apical meristem of plants. PLoS ONE 6, e18243.
 
3. Fujita, H., and Mochizuki, A. (2006). The origin of the diversity of leaf venation pattern. Dev. Dyn. 235, 2710-2721.
 
4. 藤田浩徳 (2016). 細胞間シグナル分子を介した形態形成のコンピューターモデリング ― 植物における自己組織的パターン形成 .生物の科学 遺伝 70, 371-376.

連絡先

藤田 浩徳 助教 E-mail: hfujita@nibb.ac.jp