English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

ニュース

プレスリリース詳細

2017.03.28

凍結保存した精巣組織の細胞から絶滅危惧種であるメダカを再生することに成功

国立大学法人 秋田大学

国立大学法人 東京海洋大学

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所

 

 国立大学法人秋田大学(学長:山本文雄)、国立大学法人東京海洋大学(学長:竹内俊郎)、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 基礎生物学研究所(所長:山本正幸)は、メダカ精巣を凍結保存する方法を開発するとともに、長期間液体窒素中で保存していたメダカ精巣から、機能的な卵と精子を生産し、これらから正常な次世代個体を生産することに成功しました。

 同成果は、秋田大学バイオサイエンス教育・研究サポートセンターの関信輔助教、東京海洋大学の吉崎悟朗教授、基礎生物学研究所の成瀬清特任教授の研究グループによるもので、平成29年3月3日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

 

 メダカ精巣をまるごと凍結保護溶液に浸したのちに、-196℃の液体窒素中で冷凍した。それらを解凍後に、細胞の生存を解析したところ、1年間凍結保存しても、再現性よく精原細胞を得られることが分かった。さらに、これらの細胞を孵化直後の代理親メダカ仔魚へ移植することで、代理親が雄の場合は凍結精巣に由来する機能的な精子を、雌の場合は凍結精巣に由来する機能的な卵を生産することができた。また、これらの代理親を交配することで、凍結精巣中の精原細胞由来の次世代を生産することに成功した。
 
 卵と精子の凍結保存は、絶滅危惧種や遺伝子改変動物を永続的に保存する方法として知られているが、魚類の卵はサイズが大きく、脂肪分に富むため卵や胚をそのまま凍結保存する技術の開発は進んでいなかった。同研究グループは、絶滅の危機に瀕している「東京めだか」(資料提供公益財団法人東京動物園協会 葛西臨海水族園)や産卵数が少ないダルマメダカの雄の精巣を凍結保存し、ここから得られた精原細胞を代理親であるヒメダカに移植することで「東京めだか」やダルマメダカを産卵数が多いヒメダカから得ることに成功した。
 
 同研究グループの成瀬特任教授は国立研究開発法人日本医療研究開発機構が実施しているナショナルバイオリソースプロジェクト・メダカの中核機関代表を務めており、研究上有用な近交系統や野生系統など500系統を超える様々なメダカを国内外の研究者へ提供している。近交系統や野生系統は飼育しつづける以外に保存方法がなかったが、この技術の開発によってそれらメダカ遺伝資源を半永久的に凍結保存することが可能になった。
 
fig1.jpg
【論文情報】
Scientific Reports 7, Article number: 43185 (2017)
著者:Shinsuke Seki, Kazunari Kusano, Seungki Lee, Yoshiko Iwasaki, Masaru Yagisawa, Mariko Ishida, Tadashi Hiratsuka, Takao Sasado, Kiyoshi Naruse & Goro Yoshizaki
doi:10.1038/srep43185
 
【お問い合わせ先】
国立大学法人秋田大学 助教 関 信輔 TEL:018-884-6195
E-mail:sseki@gipc.akita-u.ac.jp
 
国立大学法人東京海洋大学 教授 吉崎 悟朗 TEL:03-5463-0558
E-mail:goro@kaiyodai.ac.jp
 
大学共同利用機関法人自然科学研究機構 基礎生物学研究所
特任教授 成瀬 清 TEL:0564-55-7580
E-mail:naruse@nibb.ac.jp