第17回 配偶子制御セミナー

The epigenetics of germ-line immortality:
世代を超えたヒストン修飾の維持と線虫生殖系列の発生におけるその役割


講師  古橋 寛史 博士
所属  東北大(薬)
日時  平成22年9月16日(木)16:00-17:00
場所  自然科学研究機構 山手3号館2階共通セミナー室

講演の内容
 生殖細胞の発生過程におけるユニークな遺伝子発現プログラムの制御にはエピジェネティックな機構が関与することが示されており、生殖系列の永続性に寄与すると考えられている。しかし、その分子基盤については未だ不明な点が多い。我々は、線虫の始原生殖細胞 (PGC) において異常な転写活性化を抑制するエピジェネティック修飾因子を同定した。通常、線虫のPGCであるZ2/Z3細胞において、その誕生と共に一過的に活性型RNA polymerase IIが検出されるが、その後の胚発生過程においては概ね抑制的な転写状態が保たれている。この抑制状態の制御に、ヒストンH3の36番目のリジン残基 (H3K36)をメチル化する因子であるMES-4が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。MES-4は PGCの増殖、およびその生存維持に必須な因子であり、mes-4変異体は「孫無し (grandchild-less)」、つまりホモ接合体の子において、その生殖細胞が壊死する為に不妊となる。遺伝学的解析、および H3K36メチル化パターンのゲノムワイド解析により、MES-4は生体内において主に、新規メチル化活性ではなく、維持メチル化活性を有しており、生殖系列で転写される遺伝子座において、H3K36のメチル化を世代を超えて維持していることが示唆された。このMES-4依存的なヒストン修飾を介した「エピジェネティック記憶」が、PGCにおける転写状態を世代を超えて制御することで生殖系列の永続性に寄与している可能性が考えられる。

問い合わせ ;
自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター
小林悟 (skob@nibb.ac.jp)
℡:0564-59-5875

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