第12回 配偶子制御セミナー


脊椎動物の光周性の制御機構と脳内光受容機構

講師  吉村 崇 博士
所属  名古屋大学大学院生命農学研究科
日時  平成22年1月12日(火)15:30-17:00
場所  自然科学研究機構 山手3号館2階共通セミナー室

講演の内容
 熱帯以外に生息するほとんどの動物は日長をカレンダーとして利用し、特定の季節にのみ繁殖活動を行います。私たちは高度に洗練された季節適応能力をもつウズラを用いてこの仕組みの解明に取り組んでいます。まず光周性の中枢が存在する視床下部内側基底部(MBH)において長日刺激で誘導される遺伝子を探索したところ、 2型脱ヨウ素酵素(DIO2)遺伝子を単離しました。DIO2は脳内で局所的に甲状腺ホルモンを活性化することで性腺を発達させることが明らかになりました。またファンクショナルゲノミクスにより、下垂体隆起葉で合成された甲状腺刺激ホルモン(TSH)が、「春ホルモン」としてDIO2を制御することを明らかにしました。哺乳類以外の脊椎動物は脳深部に存在する脳内光受容器で日長を読み取っていることが古くから知られています。私たちは最近この脳内光受容器についても研究しているので、あわせて紹介したいと思います。

参考文献
Yoshimura T, Yasuo S, Watanabe M, Iigo M, Yamamura T, Hirunagi K, Ebihara S (2003) Light-induced hormone conversion of T4 to T3 regulates photoperiodic response of gonads in birds. Nature 426, 178-181.
Nakao N, Ono H, Yamamura T, Anraku T, Takagi T, Higashi K, Yasuo S, Katou Y, Kageyama S, Uno Y, Kasukawa T, Iigo M, Sharp PJ, Iwasawa A, Suzuki Y, Sugano S, Niimi T, Mizutani M, Namikawa T, Ebihara S, Ueda HR, Yoshimura T (2008) Thyrotrophin in the pars tuberalis triggers photoperiodic response. Nature 452, 317-322.
Ono H, Hoshino Y, Yasuo S, Watanabe M, Nakane Y, Murai A, Ebihara S, Korf HW, Yoshimura T (2008) Involvement of thyrotropin in photoperiodic signal transduction in mice. Proc Natl Acad Sci USA 105, 18238-18242.

問い合わせ ;
自然科学研究機構 基礎生物学研究所 生殖細胞研究部門 
吉田松生 (shosei@nibb.ac.jp)
℡:0564-59-5865