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Keystone Symposia “The Life of a Stem Cell: From Birth to Death”に参加して

開催期間:平成24年3月11日 - 16日
開催場所:Olympic Valley, CA, USA

国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門
特任研究員 松岡信弥

 今回、私は新学術領域「配偶子幹細胞制御機構」に支援していただき、2012年3月11日~16日にカリフォルニア州Olympic Valleyにて開催されたKeystone Symposia “The Life of a Stem Cell: From Birth to Death”に参加させていただきました。この学会は、配偶子幹細胞を始めとし、胚性幹細胞、腸管幹細胞、神経幹細胞等、種々の幹細胞を研究している一流の研究者が一堂に会し、情報交換を行う場でした。会場となったResort at Squaw Creekは標高1890mにあり、酸素が薄く、少し走るだけで息切れがするという思いがけない体験ができました。また、学会会場には、至る所に水が用意されており、高山病への配慮が伺われました。
 学会は口頭発表とポスター発表の二部構成であり、夜の10時まで熱い議論が繰り広げられていました。私は3日目にショウジョウバエの配偶子幹細胞形成機構についてのポスター発表を行いました。本学会にはショウジョウバエ生殖細胞研究の分野を牽引し続けるRuth Lehmann博士(New York University)が参加していましたが、ポスター発表の間に直接意見を伺うことはできませんでした。しかしながら、Lehmann博士の下で私の研究の基礎となる重要な発見をされたLilach Gilboa博士(現Weizmann Institute of Science)とは議論することが叶いました。Gilboa博士が、こちらの発表内容で足らないデータを瞬時に見抜き、助言を与えて下さったことは大変有益でありました。また、私の研究とは直接関係しませんが、腸管幹細胞やニッチ共生菌の研究者もポスターを訪れてくださり、大変励みとなりました。
 食事の時間でも有益な機会に恵まれました。領域代表吉田博士とグループリーダー浅岡博士がミシガン大学の山下博士と食事を一緒にするということで、私も同席させていただきました。山下博士からは、ジョブインタビューで重視するポイントを伺うことができ、将来私がジョブハントをする時にぜひ活かそうと思いました。また、アメリカにいる日本人ポスドクは優秀であるといったお話や、流行を追わない独自の研究の重要性といったお話を伺うことができ、充実した食事の時間となりました。その他に印象的であったのは、3博士が生殖細胞に関して話をするときに、本当に楽しそうに話されていたということです。一流の研究者とはこのような、純粋な探究心を根幹にもつ方々なのだと改めて感じたとともに、わたしも博士たちのような研究者になりたいと切に願うのでした。
 私にとって、本学会が2回目のアメリカで開催される学会でした。昨年、初めてアメリカの学会に参加したときには、文化の違いに戸惑うことがありました。具体的には、例えば、見知らぬ人同士が食事を同一テーブルで取る時に、当たり前のように自己紹介をし、話し始めるというフレンドリーさです。本学会に参加することで、このアメリカの慣習にも慣れることができたと思います。この点においても、有意義な学会となりました。
 本学会は私にとって、情報交換を行う場に留まらず、研究者の心意気を学び、また異国の文化に慣れるための非常に有益な学会となりました。最後に、学会参加にご支援いただいた新学術領域「配偶子幹細胞制御機構」に深く感謝いたします。


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