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ISH 法解説 


Contents




1.   ISH法の原理


in situ hybridization (ISH)法は、in situ(その場所)で核酸のハイブリダイゼーション(補足説明参照) をさせることにより、特定の核酸の分布状態を調べる方法のことです。ISH法には、mRNAの発現分布を調べたり、ウイルス感染を調べ たり、遺伝子の染色体上での位置決定(FISH)を調べるなども含まれますが、このウェブサイトでは、脳組織でmRNAの発現分布を調べる手法としての ISH法に焦点をあてて解説します。


<遺伝子からタンパクまでの経路>

differential distribution of mRNA and proteins


この図はニューロンを模式的に示しています。ほとんどすべての遺伝情報は核内のDNA分子の配列情報としてコードされています。遺伝情報はmRNAに「転 写」され、mRNAの塩基配列は、タンパクのアミノ酸配列に「翻訳」されます(セント ラルドグマ)。
  細胞内で遺伝子DNAは核内に存在します。mRNA(ピンクの線)はほとんどの場合細胞体に存在します(樹状突起に輸送されるものもある)。一方タン パクはその性質に応じてさまざまな細胞内領域に存在します(緑のマル)。従ってmRNAの存在場所とタンパクの存在場所は必ずしも一致しません。長い軸索 を持つニューロンの場合、この不一致は重要な意味を持ちます(後述参照)。 ISH法はさまざまな遺伝子のmRNAが混在する中から特定のmRNAだけを検出する方法です。


<ハイブリダイゼーションによるmRNAの検出>


schmeme of hybridization


mRNAは、遺伝子ごとに異なった塩基配列を持っています。そこで目的の遺伝子を検出するためには、その配列に相補的な配列を持つ「プローブ」と細胞体の mRNAを、その場で(in situ)ハイブリダイズさせます。適切な条件を選べばプローブは目的の遺伝子由来のmRNAとのみ結合します。このプローブに、DIG (digoxygenin)、FITC (fluorescein)、biotinなどの小分子(ハプテン)で標識を施しておき、それらに対する抗体を使って検出します。抗体を使う代わりに放射 性物質(RI: radioisotopic reagent)で標識しておく方法もあります。


<抗体染色とISHの違い>


difference between ISH and IHC


上述したように、mRNAは細胞体に局在するのに対し、タンパクはその性質によって局在する場所が異なります。多くの場合、タンパクも細胞体に存在するた め抗体染色とISHは一致しますが、軸索終末に局在するタンパクなどの場合は、神経細胞は遠く離れた場所に軸索をのばすため、両者の局在はまったく異なっ て しまいます。この場合、ISHは目的遺伝子を発現する細胞の細胞体を染めるのに対し、抗体染色はその細胞で発現したタンパクが実際に機能する場所を示すこ とになります。神経系の場合、抗体染色とISHで得られる情報が異なることは決して珍しいことではありません。

例:vesicular glutamate transporter 1 (VGluT1)遺伝子

興奮性ニューロンのマーカー。軸索終末に局在する。VGluT1のISHによって、興奮性ニューロンの細胞体が同定可能だが、抗体染色 では同定は難しい。一方、興奮性ニューロンのシナプス終末を抗体染色で同定することができるが、ISH法では不可能。


かつては、ISHの蛍光検出の感度が低かったため、2重染色をするためには抗体が必要と考えられていましたが、私たちが開発した蛍光2重ISH法では、多 くの遺伝子の共発現を調べることができます。タンパクが必ずしも細胞体周辺に局在するとは限らないニューロンの種類の同定を行うためには、ISH法は抗体 染色以上に強力なツールとなることが期待できます。

参考:ISH法と抗体染色のその 他の比較について



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 2. 実験ステップの説明

1)概略


ISHを行うためには、以下のようなステップが必要です。

   1)  調べたい遺伝子に対する特異的プローブの作成
   2)  脳サンプルの用意
   3)  脳組織の染色

1) は主に分子生物学的手法、2)、3)は組織学的手法が要求されます。それぞれのステップは、さらにいくつかの実験操作から成り立ちます。


 
Flowchart of ISH


プロトコルへのリンク


詳細な実験プロトコルはプロトコルPDFの ページで見ることができます。

<基本プロトコル(フローチャート水色)>

in vitro転写によるRNAプローブ合成 → ProbeSynth.pdf
浮遊ISH法 
      単プローブによる発色法 → floatingISHj.pdf
      完全版(含蛍光2重ISH法) → floatingDISHj.pdf
スライドガラス法
      完全版(含蛍光2重ISH法) → slideglassISH.pdf


<オプション(フローチャート黄色)>

PCR クローニング → PCR_cloning.pdf
プラスミド精製 → Midscale.pdf



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2)プローブの作成手順



「プローブ」とここで呼んでいるのは、標的遺伝子にはりつくアンチセンスRNAプローブのことです。RNAプローブを合成する ためには、鋳型となるDNA が必要です(もっと詳しく)。鋳型DNAは、さまざ まなルートで入手可能ですが、自作の必要があるときは以下の手順で作成します。

  • (A) 標的遺伝子が発現している組織からRNAを抽出
  • (B) プローブに使いたい配列部分をPCR増幅するために必要なプライマーセットの設計と合成(合成は普通は業者委託)
  • (C) RT-PCRによる遺伝子断片の増幅
  • (D) 増幅した遺伝子断片をプラスミドベクターにクローニングする。
  • (E) 正しい配列がクローニングされていることの確認
  • (F) 遺伝子断片を含むプラスミドの大量精製
  • (G) プラスミドを制限酵素で切断し鋳型DNAを作る。
  • (H) Gの鋳型を使ってin vitro転写を行いRNAプローブを調製する。

 A~Hのステップは標準的な分子生物学的手法なので、さまざまなプロトコル、キットが利用可能です。このサイトでは、プローブが入手 できることを前提に(G),(H)の部分を中心にしたプロトコル(ProbeSynth.pdf) を紹介しています。その他にキットを使わないRNA精製法のプロトコル (RNA_purification.pdf)、 RT-PCRによるプローブプラスミドのクローニング法 (PCR_cloning.pdf)、 キットを使わないプラスミド調整法 (Midscale.pdf) も紹介しているので参考にしてください。



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3)ISH法による脳組織の染色



ISH法による脳組織の染色は、大きく分けて4つのステップから成り立ちます。
a)  プローブが細胞内の核酸にアクセスできるようにする前処理
b)  ハイブリダイゼーション
c) 非特異的結合除去のための洗い
d) プローブの可視化

それぞれのステップで具体的にどんな操作をするかは、プロトコルによって少しずつ違いますが、基本的な操作は共通です。


a) プローブが細胞内のRNAにアクセスできるようにする前処理


mRNAは細胞体に存在しているので、細胞膜の内側にあります。またタンパク質に囲まれる形で存在しています。プローブに使われるDNA/RNAにはいろ んな種類がありますが、私たちが通常使う500~1000塩基程度のRNA分子は実はかなり巨大な分子であり、何も処理せずにハイブリしても普通は細胞内 のRNAにアクセスできません。そこで界面活性剤で膜を除去したり、Proteinase Kでタンパク質を分解する操作が必須となってきます(この操作をしないプロトコルもあります)。特にProteinase Kの条件は非常に重要なパラメーターでISHの結果を大きく左右します。
   逆にRNAプローブの方を加水分解で小さい分子にすることを推奨するプロトコルもあります。私たちのプロトコル(浮遊法の場合)ではRNAプローブ が1000塩基を 超えるくらいだと加水分解による効果を確認できました。特に2000塩基を超えているとシグナル強度に大きな差が見られました。しかし、1000塩基以下 のプローブでは特に加水分解をする必要はなく、むしろ非特異的なシグナルを増やすのであまり勧められません。


b) ハイブリダイゼーション


ハイブリダイゼーションに関しては、いろんな分子生物学のテキストで解説されているので、ここでは実験条件を理解する最低限の解説にとどめます。ハイブリ ダイゼーションを理解する上で重要なキーワードは”stringency(厳密さ)”という言葉です。この言 葉を理解するには相補的な核酸同士の結合は必ずしも厳密なものではないという事実を把握する必要が有ります。つまり核酸同士の2重鎖の形成には何百塩基か が少しずつ貢献するので、すこしくらい違う配列でも、条件によっては相補鎖結合を行ってしまうのです。相補鎖結合が起こるためにどの程度配列が厳密に一致 する必要があるかを”stringency”と呼びます。一般に塩濃度が高ければstringencyは低くな り、温度が高ければstringencyは高くなります。
   ISH法がうまく行くためには、細胞中のRNAと、プローブRNA(もしくはDNA)との間で配列特異的な結合が起こる必要がありますから、 stringencyは十分高くなくてはなりません。ところがstringencyを高くしすぎると結合そのものの効率が悪くなります。そこで通常は少し 低めのstringencyでハイブリダイゼーションを行い、ハイブリ後の洗いでより高いstringencyを確保しています。
   ここで大事なのは配列によってハイブリダイゼーションの至適条件は異なるということです。GC間の結合は、AU間の結合より強いので、配列中にG, Cが多く含まれる配列はより高い温度でハイブリさせないとstringency が低くなって非特異的な結合が増えてしまうのです。上述したようにstringency の高さはハイブリ後の洗いによってある程度確保できるのですが、GC比率が高い配列を低い温度でハイブリさせてしまうと、洗いで除去できないほど高い非特 異的結合が生じてしまうことがあります。従ってハイブリの条件は用いるプローブごとに変える必要が有ります。
   ハイブリのstringencyは、ハイブリ液の組成と温度で決まりますが、その調整は通常温度調節で行います。ただし、ハイブリの温度の設定には stringency以外の要因がからんできます。高温条件ではプローブの浸透性がよくなるため、一般にハイブリ効率はよくなります(ただし stringencyも高くなるので、一定温度以上になると逆にハイブリ効率は下がります)。一方、組織のダメージが大きいので、切片がぼろぼろになりや すくなります。そこでハイブリの温度はstringency、プローブの浸透性、切片へのダメージなどの条件の兼ね合いで決めることになります。私たちは 浮遊法(後述参照)ではハイブリの温度は通常60℃で行い、GC比率の高いプローブの場合に65℃、68℃、72℃など、より高い温度でのハイブリを試み ることにして います。なお、あまりにGC比率が高い場合には、72℃でも非特異的結合が見えることもあるので、GC比率の高いプローブはできるだけ避けた方が無難で す。


c) 非特異的結合除去のための洗い


ハイブリ後の洗いは、stringencyの低い条件からより高い条件へ順番に行います(できるだけムラをなくすため)。Stringencyは塩濃度と 温度で調整可能なのですが、それだけでは非特異的な結合を除去するのは難しいので、RNaseによって正確な相補結合をしていない部分を切断します。相補 的な結合を行っている部分はRNaseの分解から保護されます。プロトコルによっては、RNase処理を行わないこともありますが、多くのプロトコルでは 必須です。RNase処理後に洗いのstringencyを上げて、切片に対して非特異的結合をしているRNA断片をはがします。


d) プローブの可視化


プローブの可視化にはいろんな方法があります。かつては放射線同位元素でプローブを標識する方法(RI法)がよく用いられましたが、私たち は放射線同位元素を使わない方法(non-RI法)を使っています。
   Non-RI法で、一番多用されている方法はDigoxygenin (DIG)を取り込んだアンチセンスRNAをプローブとして用い、アルカリンフォスファターゼ標識抗DIG抗体で認識、最終的にはNBT/BCIPなどの アルカリンフォスファターゼ基質の発色反応で検出する方法です。DIGのかわりにbiotin, fluorescein (FITC)を用いたり、NBT/BCIPの代わりに他の反応基質を用いることもあります。特にHNPP/Fast Redなどの蛍光基質は2重染色に有効です。この可視化の部分は商品的にはさまざまなオプションが有るのですが、現実的には感度があまりよくない場合が多 く、選択は限られてきます。私たちはTSA (tyramide signal amplification)法を活用することで、簡便で感度の高い蛍光2重ISH法を開発しました。

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3. ISHの結果を左右するパラメータについて


1)プロトコルの選択


ISH法にはさまざまなプロトコルがあります。このホームページでは、基本プロトコルとして浮遊法とスライドガラス法の2種類の方法を紹介しています。以 下にまずこの2法について簡単に説明し、ISH法の選択を考える上で重要と思われるパラメーターについて、それ以外のプロトコルからも例を取りながら説明 します。


<浮遊法>

固定した脳ブロックをマイクロスライサーで15-50 µm厚の切片にします。浮遊状態の切片をproteinase K、アセチル化処理した後、50-70℃でDIG (もしくはFITC)で標識されたアンチセンスRNAとともにハイブリします。ハイブリ後、RNase処 理を含む洗いを行い、アルカリンフォスファ ターゼ標識抗DIG (FITC)抗体により認識、フォスファターゼ基質の発色、発光により検出します。そののち切片をスライドガラスに貼り付けエンテラン などに包埋します。なお、私はほとんどこちらの方法でISHを行っています。プロトコルはこ ちら


<スライドガラス法>

サンプルは、固定せずに取り出した脳を急速凍結して使います。この脳ブロックをクライオスタットで10-20 µmの切片に薄切し、スライドガラス上に取ります。これ以降の操作はすべてスライドガラス上で行います。まずPFA(パラフォルムア ルデヒド)溶液で、潤水操作(rehydration)と後固定を同時に行います。Protainase K処理はせずアセチル化のみを行い、DIG (もしくはFITC)で標識されたアンチセンスRNAとともに72℃でハイブリします。ハイブリ後はRNase処理はせず、72℃での洗いのみを行いま す。アルカリンフォスファターゼ標識抗DIG(FITC)抗体により認識、フォスファターゼ基質の発色、発光により検出します。プロトコルはこ ちら


<浮遊法とスライドガラス法の比較>

浮遊法 スライドガラス法
原法 Liang ら(2000) Schaeren -Wiemersら(1993)
特徴 固定済みの脳切片を浮遊状態でISHをすることにより、試 薬の浸透効率をアップ。 スライドガラス上でISHを行う。高温でハイブリから洗い までを行うことにより、ステップが簡素化。
長所 固定済みサンプルをきれいに染める。組織学的に美しい標本 を作りやすい。 ほとんど条件設定しなくても、低バックグラウンドで高感度 の染色が可能。非常に簡単。
短所 スライドガラス法より操作はやや煩雑。胎生脳や、バラバラ になりやすいサンプルは難しい。 高温でハイブリするためサンプルを傷つけやすい。写真はや やとりにくい。
向いている
サンプル
固定済みの成熟脳など。 組織の柔らかい胎生児の脳や、未固定の脳を急速凍結したサ ンプル。
切片厚 15-50 µm 10-20 µm
ProK処理 必要。濃度条件は重要。 通常は不要。固定脳の場合は必要。
RNase処理 必要。 通常は不要。固定脳でバックグラウンドが高い時はした方が いい。
ハイブリ温度 60-72℃。プローブによって条件設定必要。 72℃
感度 良好 良好
バックグラウンド 低い。 低い。
試薬の浸透性 良い。 悪い。シグナルはほとんど表面のみ。
難しい点 染色後の切片張り クライオスタットによる切片作成


<方法の選択>

一般に「固い」サンプルの場合は、浮遊法の方が向いています。きれいな標本を作るのは、浮遊法の方がおそらく簡単で、写真も撮りやすいと思います。スライ ドガラス法は、切片が薄いためか、切片の形が分かりづらく、きれいな写真を撮るのは難しいように感じます。なお、このウェブサイトで紹介している写真のほ とんどすべては浮遊法で行っています。一方マウス胎児など浮遊法だとばらばらになってしまう場合は、スライドガラス法の方が向いているでしょう。



2)  プローブについて


<RI法とnon-RI法について>

かつてはISH法の標準はRI標識したプローブを用いたRI法でした。今でもnon-RI法は感度が悪いと思っている人もいるかも知れません。確かにシグ ナル強度という意味ではRI法は感度が良いのですが、解像度を加味すると必ずしもそうとはいえません。例えばRI法で発現しないとされていた遺伝子でも、 我々がnon-RI法で調べると実はまばらな発現を見せていたことがありました。今まで数多くの遺伝子のISHを行いましたが、論文でRI法で検出されて いる遺伝子の大部分がnon-RI法で検出できました。さまざまな細胞種が混在する脳においては、大まかな解剖学的単位以上に細胞種が大事だと私は考えま す。従って細胞レベルの解像度を持たないRI法より、non-RI法を推奨します。

<オリゴプローブかアンチセンスRNAプローブか>

このサイトではアンチセンスRNAをプローブとした方法を前提として考えています。オリゴDNAをRIもしくは、DIGで標識してプローブに使う方 が、分子生物学をしていないラボには簡単かも知れませんが、論文を見る限り、はるかに感度は落ちます。重要な発現を見落とす可能性が大きいので、特殊な用 途以外には勧められません。RNAではなく、DNAをラベルしてプローブにする方法もあるようですが、RNAプローブを使った場合と比べてどちらが良いか は分かりません。ただし教科書的には、RNA-RNAの結合の方が、RNA-DNAの結合より強固なので、RNAプローブの方が感度が高いと思います。

<プローブの長さ>

アンチセンスRNAをDIG標識する場合、DIG標識したウラシル(U)をRNA転写の際に取り込ませるので、長ければ長いほど1RNA分子あたりの DIG分子の数が増え、一般的には感度が良くなります。ただし1000塩基を超えると浮遊法ではプローブが浸透しにくくなるので、あまり長すぎると逆にシ グナルは落ちてきます。私たちは500-1200塩基くらいのプローブを設計し、シグナルが弱い場合には、同じ遺伝子の別の領域から新しいプローブを作 り、混合して使っています。長いプローブ(例えば2000塩基くらい)でも、部分的加水分解によってプローブを断片化すると使えます。ただし配列によって はバックグラウンドも上がるので注意が必要です。なお長さの浸透性への影響はプロトコルによって左右されると思います。例えばスライドガラス法ではプロー ブが長くなることによるシグナル減弱はほとんど見られませんでした。これはスライドガラス法では、プローブがあまり深い部分まで浸透していないからかも知 れません。



3) 固定について


サンプルの固定状態はISHに大きく影響します。私たちの標準的な方法では、4%パラホルムアルデヒド/0.1M PBで灌流した脳は、室温数時間〜4℃一晩同じ固定液で固定を続け、そののち、4℃で30%スクロース/0.1M PBで数日〜2週間置きます。液が十分サンプルに浸透したら、スライディングスライサーで凍結切片を作成し、切片をさらに室温2時間〜4℃一晩固定液に漬 けた後、ISHに用います。

固定液については、ピクリン酸やグルタルアルデヒドの入った固定液を使っても、それほど変わらない結果が得られていますが、他の比較的ゆるい固定条件の場 合は、ISHのシグナルが激減するようです。逆に固定が強すぎるとシグナルは弱くなるようです。


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4. ISH法の応用


1) 2重ISH法


2種類の遺伝子産物が同一の細胞で発現しているのかどうかは、非常に重要な問題です。今までいくつかの2重ISH法が報告されています。もっとも初期から 行われているのは、RIとDIG標識の2重ISH法だと思います。しかしこの方法は細胞レベルでは感度が十分ではありません。 発生生物学などでは、2種類の違うアルカリンフォスファターゼ基質を使った2重ISH法もうまく使われています。最近私たちの研究室を含めていく つかのラボで使われているのはTSA (Tyramide Signal Amplification)法を使うやり方です。TSA法は非常に大きくシグナル増強できる反面、バックグラウンドも出やすいので、うまく条件 設定できていないと汚い染色になります。しかしうまく使えば美しい染色が可能です。またすぐれた蛍光発光基質の開発で、まだ感度は不足しているもののかな り自由に蛍光2重ISH法ができるようになっています。
   

2)  ISH法のさらなる応用


蛍光ISH法がうまく行くようになったことで、他の手法との組み合わせもよりうまく行くようになっています。例えば抗体染色と2重蛍光ISH法を組み合わ せると多重染色が可能です。BrdUで標識するBirthdatingとの組み合わせ、レトログレードトレーサーとの組み 合わせなどは特に神経解剖学を研究する上で貴重なツールになるでしょう。


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以上 文責 渡我部