Q & A


Contents

  • 1. プローブ関係
  • ・ プローブデザインの注意点は何か
    ・ 加水分解の必要性
    ・ プローブの保存方法
  • 2. ISH
  • ・ RNase対策はどの程度気を使う必要があるか
    ・ 容器の洗い方 
    ・ 2% N-lauroylsarcosineの調製
    ・ 0.2xSSC が濁る。
    ・ どのくらいの液量が必要か
    ・ シグナルが本物かどうかの判定方法。
    ・ 浮遊法と、スライドグラス法のハイブリバッファが違うのはなぜか。
    ・ ブロック、切片の保存。
  • 3.Trouble shooting 
  • <ISH共通>
    ・ RNAプローブのOD値がおかしい。
    ・ RNAプローブを電気泳動するとバンドが複数本出る。
    ・ 制限酵素で切っても切れ残りがある。
    ・ シグナルを強くする方法
    ・ 複数種類のプローブを混ぜるときの量

    <浮遊法>
    ・ 切片がうまくはれない。 

  • <single ISH>
    ・ 封入するとシグナルが弱くなる?
    ・ 封入するとシグナルが壊れるように見える。
    ・ 染まりムラがある。
    ・ センス鎖にもシグナルが出る。
    ・ NBT/BCIPの色が赤茶けている。

    <double ISH>
    ・ HNPP/FRのシグナルが消えた?
    ・ TSAで顆粒状のBackgroundが出る。
    ・ TSAのシグナルが出ない。


1.  プローブ関係

・ プローブデザインの注意点は何か

・ 加水分解の必要性

・ プローブの保存方法



・ プローブデザインの注意点は何か

ISHプローブを自分でPCRによって作成する場合、遺伝子配列のどの領域を選ぶかは、長さ、GC比率、ホモロジーの3点に注意する必要がある。

(長さ)non-RI法の場合、常に感度が問題になるので、プローブの長さは長ければ長いほど良い(一分子あたりに取り込まれるDIGの数が増える)。た だし、あまり長すぎると浮遊法の場合には、切片内部までプローブが浸透しなくなるので逆にシグナルが弱くなる。目安としては、700-1200bpくらい のプローブだと、加水分解せずにそのまま使える。

(GC比率)GC比率は、できるだけ50%に近い方が良い(40-60%)。GC比率が高いと(60%以上)、バックが出る可能性が高い。その場合、ハイ ブリの温度を65-72℃間であげると、バックを落とせる場合も多い。スライドガラス法の場合は、もともと72℃でハイブリするので、高GC比率でもバッ クが低い。逆にこの場合、GC比率が低いとシグナルが弱くなる。

(ホモロジー)ほとんどすべての遺伝子は、ファミリー遺伝子を持っているので、必ずBlastサーチをかけて似た配列を持った他の遺伝子が存在しないこと を確認する必要がある。違う種のプローブでの経験に基づくと、80%程度のホモロジーがあれば、量の多い転写物に対しては、クロスハイブリする可能性があ る。

(その他)プローブとして選ぶ配列は、翻訳領域でも、非翻訳領域でも構わないが、3'UTRには、変な配列が多いので避けることが多い。なお、プローブの 特異性チェックのためには、配列が重ならない2種類のプローブを設計することが望ましい。


 ・ 加水分解の必要性

スライドガラス法の場合は、してもしなくてもあまり変わらない(プローブがあまり深部には到達していない?)。浮遊法の場合は、800bp以上のプローブ の場合、加水分解によるシグナル増強が認められる。2kb以上のプローブでは、加水分解は必須。ただし、加水分解すると、バックグラウンドが上がる時もあ るので、プローブの特異性には注意すること。


 ・ プローブの保存方法

精製後DEPC水に溶かしたRNAプローブは、-30℃で凍結保存している。凍結融解を繰り返しても、特に問題があるようには思えない。数年間は大丈夫。 ただし、プローブにRNAseが混入している場合は、凍結融解を繰り返すとだんだんプローブが壊れる可能性があるので、ISHがうまく行かなくなったら、 プローブを作り直した方がよい。



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2.  ISH編

・ RNase対策はどの程度気を使う必要があるか

・ 容器の洗い方 

・ 2% N-lauroylsarcosineの調製

・ 0.2xSSC が濁る。

・ どのくらいの液量が必要か

・ シグナルが本物かどうかの判定方法。

・ 浮遊法と、スライドグラス法のハイブリバッファが違うのはなぜか。

・ ブロック、切片の保存。


・ RNase対策はどの程度気を使う必要があるか

RNaseの何が問題かというと、非常に安定で不活性化しにくいこと(昔は、RNaseをオートクレーブしてDNase活性を除いたくらい)。だからラボ でRNAワークをする場合に一番注意しないといけないのは、高濃度のRNaseをラボ内にまき散らかさないことだと言える。ISHや、Molecular biologyでRNaseを使用する際は、pureなRNAseを扱ったチップは、専用の捨て場に捨て、RNaseを含んだ廃液も専用の廃液捨てに回収 すること(この廃液は、飛散しないように気をつけながら流しに捨てている)。RNaseを扱う容器はすべてディスポか、専用にして洗浄にも気をつけるこ と。一番問題だと思うのは、プラスミド精製キットである。多くのプラスミドキットは、一番最初のステップでRNaseを使用する。このステップを全く気に していないラボはラボ全体がRNaseで汚染している可能性があるので自己防衛した方がよい。なお、我々のラボでは、RNaseフリーの部屋を一つ作っ て、RNaseを使うまでとRNase後では別の部屋でISHを行っている。

pureなRNaseの扱いに気をつけていれば、実はRNase対策はそれほど神経質にならなくても良いようである。一般的な注意としては、RNA関係の 試薬、容器等は手袋をして扱うこと、RNase除去用の洗剤(RNaseZapや、absolveなど)で、使う場所をこまめに拭く、実験中はしゃべらな い、など。

試薬のDEPC処理はした方が良いと思うが必ずしも必要ない。長期間4℃でサンプルを浸潤させる30%スクロース液はDEPC処理した水で作る ことが多いが、それ以外のISH試薬は、DEPC処理しなくても大丈夫なようである。ただし、上述のようにこれはラボによる。RNaseの混入が疑われる 時は、できるだけDEPC処理をした試薬を使うことを勧める。


・ 容器の洗い方

(浮遊法)浮遊法では、プラスチックの6穴〜24穴ディッシュを使用している。これをすべてディスポにするとあまりにもったいないので、各ステッ プ専用のディッシュを用意して、毎回使用後に洗っている。各ディッシュ同じ試薬しか入れないので、洗浄は軽く水洗いするだけでOK。最後にオートクレーブ した超純水でゆすいで72℃で乾燥させる。乾燥の際は、ほこりが入らないようにフタをしたまま乾燥させる。昔は、水洗い後、DEPC水に一晩つけてから乾 燥させていた。今でもディッシュによっては、洗浄後DEPC水処理していて、それは新品と同じグレードとして使用している。
 (スライドガラス法)PBS用のビンは3回の洗いを2度行うが、ここはビンを3つ使っている。2回目は一回目に使ったPBSを捨て て、洗わずにそこに新し いPBSを入れて使っている。ISH用の染色壺は、使用後軽く水洗いして、乾熱滅菌している。


・ 2% N-lauroylsarcosine(NLS)の調製の仕方

調整時には、粉っぽさがなくなるまで温めて溶かす。50℃ー60℃で数時間おいてみたり、37℃で一晩おいてみたりしている。なかなかきれいに溶けてくれ ないが、しつこく溶かす。2%NLSは溶けても透明にならず濁った白色の液で、放置しておくと沈殿ができることがあるが、一度温めて溶かしたらそのまま 使っている。使う前によくまぜること。


・ 0.2xSSC/NLS が濁る。

2xSSC/NLSは無色透明だが、0.2xSSC/NLSは、白く濁っているのが正常。使う前に37℃で温めている。


・ どのくらいの液量が必要か

24 well plate....250 ul 〜 1 ml
12 well plate....2 ml〜 2.5 ml
6 well plate....4 ml 〜 5 ml

ハイブリ、抗体、TSA反応は、試薬の節約のため、少めにしている。切片がひたひたになるくらいなら大丈夫。ただし、TSAは試薬をケチりすぎるとシグナ ルが全く出なくなることがあるので注意。NBT/BCIP反応時も試薬が少なすぎると途中で反応基質が足りなくなって、発色反応物が分解されることがあ る。<目安>マウスの切片数枚なら、ハイブリ、抗体は24穴で500 ul。TSAは300 ul。洗いは12穴で2 mlくらい。


・ シグナルが本物かどうかの判定方法

最低限必要なコントロールは、センス鎖でバックグラウンドシグナルが出ないことである。抗体染色と違ってISHのバックグラウンドはGC比率に影響される ことが多いので、センス鎖は良いコントロールになる。ただし、遺伝子によっては、センス鎖も転写が起こっていることがあり得るし、センス鎖でバックが出な くても、目的以外の遺伝子にクロスハイブリしている可能性もある。

クロスハイブリの可能性が疑われる場合は、ハイブリの温度を上げてみると良い。本物のシグナルであれば、多少ハイブリの温度を上げてもシグナルのパターン に変化はないが、バックや、クロスハイブリは大幅に減少する可能性がある。ただし、配列によっては、いくら高温でハイブリしてもバックは消えない。

おそらく一番重要なのは、プローブの特異性をよく把握することだ。例えば、興奮性ニューロンのサブポピュレーションだけが染まるようなパターンが、非特異 的に起こることは考えにくい。あるプローブで何らかの特異性を検出できたら、その特異性が同じ遺伝子の違う配列をプローブにしても検出できれば、クロスハ イブリの可能性は低くなる。

ちなみに悲観的な言い方をすれば、どんなISHシグナルも、本物であるという保証はない。見えているシグナルが、artifactである可能性は、常に念 頭においておく必要がある。逆に見えていないシグナルが存在する可能性はもっと大きいかも知れない。ISHの検出感度が自分の要求するレベルに達している 保証はないからだ。もっともこれはほとんどすべての実験系に通じて言えることで、どの技術を使っても、絶対の答えはありえない。


・ 浮遊法と、スライドグラス法のハイブリバッファが違うのはなぜか。

浮遊法とスライドガラス法は、もともと独立のプロトコルなので整合性がない部分がある。一度、浮遊法のバッファでスライドガラス法を行ったことがある。そ の時は、ちゃんとISHはできて、しかもスライドガラス法のバッファと比べてシグナルが強い印象を持った。ただ、
近似ファミリー間のクロスハイブリが疑われたので、それ以来それぞれ別のバッファでISHを行うようにしている。



・ ブロック、切片の保存方法。

灌流固定した脳ブロックは、-80℃で、数年間は保存できる。我々は、ジップロックつきのナイロン袋に密封して保存している。表面が乾燥するとシグナルに 影響が 出るようである。切片は、不凍液で保存可能である(プロトコル参照)。ISHに関する限り、数年間はシグナル強度に影響が出ているようには見えない。
  スライドガラス法には、未固定の新鮮脳が適している。未固定の新鮮脳はTissueTek中に埋めて急速凍結してからクライオスタットでスライドガラ ス上にサンプルを取るのだが、凍結した脳ブロックはやはり-80℃で長期保存がきく。切片の乗ったスライドガラスも-80℃で保存可能である。


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3.  Trouble shooting

<ISH共通>

・ RNAプローブのOD値がおかしい。

・ RNAプローブを電気泳動するとバンドが複数本出る。

・ 制限酵素で切っても切れ残りがある。

・ シグナルを強くする方法

・ 複数種類のプローブを混ぜるときの量


<浮遊法>

・ 切片がうまくはれない。

<single ISH>

・ 封入するとシグナルが弱くなる?

・ 封入するとシグナルが壊れるように見える。

・ 染まりムラがある。

・ センス鎖にもシグナルが出る。

・ NBT/BCIPの色が赤茶けている。

<double ISH>

・ HNPP/FRのシグナルが消えた?

・ TSAで顆粒状のBackgroundが出る。

・ TSAのシグナルが出ない。


<ISH共通>

・ RNAプローブのOD値がおかしい。

スピンカラムをかけた直後にOD値を測定すると、OD320に変な吸収がある。急ぐ場合は、その分をOD260から引いてそのままプローブとして使うこと もできるが、エタノール沈殿を行う方が正確にOD値を測定できる。
  核酸のOD260値はpHによって変わってくる。従ってOD測定のためにサンプルを希釈する場合は、pH8.0のTEを使うこと。超純水を使うと OD260/280の比がおかしな値になることがある。


・ RNAプローブを電気泳動するとバンドが複数本出る。

RNAは一本鎖なので、配列に応じた2次構造を作る。従って普通のアガロースゲルで泳動すると複数のバンドが現れることはよくある。どうしても気になる時 は、ノーザンハイブリダイゼーションなどに使うホルムアミドゲルなどの変性ゲルで泳動すれば分子量に応じた泳動度を示す。


・ 制限酵素で切っても切れ残りがある。

プラスミドの精製によっては、アルカリで変性したプラスミドの混入が目立つことがある。このアルカリ変性プラスミドは、スーパーコイルしたプラスミドより わずかに早く泳動される(アルカリバンド)ので一見切れ残りに見えるが、制限酵素では切れないので、いくら切ってもバンドがなくなることはない。制限酵素 で切る前のプラスミドと比べて見ると良い。


・ シグナルを強くする方法

一番有効なのは、プローブにする領域を増やすこと。300 bpのプローブよりは600bpのプローブの方がシグナルは強いし、1kbのプローブ1つより2つの方がシグナルが強くなる。
ISHシグナルのSN比は、転写物1コピー当たりに張付く「DIG」の数で決まる。単純に考えて、300 bpのプローブに比べて1kbのプローブを3つ使うとシグナルは10倍にもなることになる。800 bpを越えるプローブの場合は、加水分解によってシグナルが強くなることがある。ただし、バックが増える可能性もあるので、注意すること。


・ 複数種類のプローブを混ぜるときの量

バックグラウンドはDIGの総量で決まってくる。それに対して、シグナルは、ある点でsaturateする。予備実験の結果だと、40 ng/mlの濃度でも通常(500 ng/ml)とそれほどシグナルの強さに変わりはなかった。そこで複数プローブを混ぜる時は、プローブの総量が500-1000 ng/mlになるように、各プローブの量を減らして混ぜる。プローブの量比は等モルになるのを目安にする。例えば500 bpのプローブ2種類と1kbのプローブを混ぜる時は、1 mlのハイブリ液中にそれぞれ125 ng, 125 ng, 250ngずつ混ぜることになる。


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<浮遊法>

切片がうまくはれない。

切片をうまく貼るコツは、1)たぷたぷの液中である程度形を整える。2)液を絵筆で吸い取って、全体がまんべんなく乾くようにする。の2点。特に重要なの は、部分的に乾かないこと。一般的に縁の方が早く乾いてしまう。ある程度形が整ったら、絵筆の水分をキムワイプなどで吸い取ってからまず内側の水分を吸い 取り、絵筆に水分が多くなってきたら、縁の部分の水分を外へ追い出すようにして外側部分を乾かす。段々全体が乾いて来たら、内側は乾かす。外側は湿らすの 繰り返しで、全体がほぼ同時に乾くように気をつけること。切片が湿っているうちは、スライドガラス上を滑らして形を整えられるが、完全に乾いてしまったら 切片は動かなくなる。半湿りの状態で切片をきれいにする。慣れてくるとエタノールがマウント液に入っている方が作業がしやすいが、慣れないうちはただの PBSの方が貼りやすいかもしれない。
  ISHをした切片は熱で縮んでいるので、普通に広げても端が丸まってしまう。しかも具合の悪いことに、丸まる場合は縁が切片の下に巻き込まれることが 多 い。これを伸ばすにはある程度乾かないと無理なので、形を整えるまでは全体が湿った状態でかつ余計な水気がない状態を維持しなくてはいけない。場合によっ ては、ある程度水気をいったん取った上で、もう一度水気でたぷたぷにして筆先で切片の下側に巻き込まれた縁を外に出す必要がある。
  湿っている状態ではしわが残っていても、乾いてくるとある程度は縮んでしわはなくなる。乾いたときの最終の状況をイメージして、湿った状態では少しし わが残っている方が最終状態ではきれいになる。最初から切片を引っ張ってしわをなくすと乾いた時に縮んでヒビが入ってくる。ただし、慣れないとしわが残っ たまま乾いてしまうので、これは上級編のテクニック。
  切片全部をきれいにはろうとすると失敗するので、最初のうちはきれいに貼りたい場所を決めて、そこに神経を集中すると良い。
 なお、切片厚は、single ISHの場合30-50 umで行うが、厚い方が一般的に貼りやすい。double ISHで15umの切片を貼る場合は、最初から全部をきれいにはるのは諦めて、きれいに貼るところを決めて貼っている。


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<single ISH>

・ 封入するとシグナルが弱くなる?
・ 封入するとシグナルが壊れるように見える。

NBT/BCIPの反応生成物はあまり安定ではなく、条件によっては壊れてしまう。とくにキシレンベースの封入剤(エンテランなど)で封入するときは要注 意である。脱水が不十分な状態でキシレンにつけるとたちまちシグナルが拡散してしまう。キシレンの前の100% エタノールのステップは大事なサンプルの場合は必ず新鮮なものを使うこと。ちなみに製品仕様書には、キシレンベースの封入剤を使用しないように指示してあ るが、脱水が完全ならば、シグナルが拡散することはない。
  封入時にメタノールもしくはエタノール系列のステップを通すことで、赤茶色のバックグラウンド色を抜くが、このときシグナルもある程度抜けるので、発 色 時の色の付き方によっては、封入後シグナルが弱くなるように感じることはある(下記参照)。切片貼り付け後乾燥を十分(3日〜1週間)した方が良いような 気がするが、気のせいかもしれない。バックグラウンドの脱色ステップをとばして直接エタノールにつけると、シグナルの芯に不自然な色の染色が残るのでやめ た方がいい。


・ 染まりムラがある。

染まりムラにはいろんな原因が考えられる。液量が不十分だったり、切片が乾燥してしまったりするとムラが出ることはありうる。また、浮遊法の場合は、灌流 固定時の灌流ムラの可能性もあるので、他のサンプルを試してみる必要がある。浮遊切片を作成するときは、我々はドライアイスを使って、ステージから上の方 へゆっくり凍結しているが、ドライアイスがまだ凍っていないところに直接触って部分的に凍るとそこもムラになる。
 プローブにフリーのDIG-UTPが残っていると、ムラになることがある。エタノール沈殿だけでは、高濃度のヌクレオチドを除去することは困難なのでカ ラム精製をした方がよい。



・ センス鎖にもシグナルが出る。

ISHのバックグラウンドを決める最大の要因はプローブのGC比率で、一般的にGC比率が高いプローブはGCリッチな配列に非特異的な結合をしやすい。 GC比率が高くて、センス鎖にシグナルが出る場合は、非特異的な結合である可能性が高いので、ハイブリの温度を上げて見る。また、たまたまセンス鎖とハイ ブリ可能な配列を検出している可能性があるので、遺伝子の別の場所のセンス鎖で同じようなシグナルが検出できるか確認する。


・ NBT/BCIPの色が赤茶けている。

NBT/BCIPの色は、発色時の液(TS9.5)のpHが影響するらしい。反応液の量が少なすぎると良くない気がする。あまりに赤茶色がひどいときは、 発色液のpHを計り直すと良いかも知れない。0.1% Tween-20を加えておくと良いかもしれない(伝聞情報)。ただし我々も発色時の色を決める要因はきちんと把握できていない。
 ちなみに封入時に、赤茶色の成分はある程度抜ける。切片を貼り付けた後、よく乾燥させる(3日〜1週間)方がいい気がする。メタノールによる脱色ではな く、エタノール系列による脱色をする場合は、95%エタノールで一番脱色がよく起こるので、この時点で脱色状況をモニターするとよいだろう。ここで「抜 け」が不十分だと赤茶けた染色がそのまま残る。逆にこのステップを十分長く取る(10分〜数時間?)と完全に青くすることもできる。ただしシグナルまで抜 けてしまうので注意。


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<double ISH>

・ HNPP/FRのシグナルが消えた?

HNPP/FRのシグナルは非常に不安定ですぐにdiffuseてしまう。浮遊法で2重ISHを行う時は、発色停止後、できるだけ速やかにスライドガラス にマウントすること。サンプル数が多いときは、スライドガラスにマウントした後にスライドガラス上でHNPP/FRの反応をしても良い。ややシグナルが弱 い気がするが、それほど大きくは変わらない。ただしスライドガラス上で発色反応を行うときは、発色液をフィルター濾過しておかないと、顆粒状のバックグラ ウンドが多い。スライドガラス上で発色した場合は、反応終了後、乾燥させないように気をつけて封入すること。
  HNPP/FRの場合、シグナルの保持には封入剤が非常に大きな影響を与える。我々が試した中では、唯一PermaFluorだけが封入してもシグナ ル 拡散が起こらなかった。封入してもdiffuseが起こっていなければ、そのサンプルは-30℃で凍結保存をしておけば乾燥しない限り1ヶ月くらいは安定 してシグナルを保持している。理由は不明だが、封入時点でdiffuseの傾向があれば、保存中にシグナルはどんどん劣化する。万一、HNPP/FRシグ ナルのdiffuseが疑われる時は、TNT液中でカバーグラスをはずして再度スライドガラス上でHNPP/FR反応を行うことができる。
  なおマウント時にエタノールを含む液を使うとシグナルは消えるので、PBSでマウントすること。


・ TSAで顆粒状のBackgroundが出る。

チラミドによるシグナル増幅作用は非常に大きいので、バックグラウンドも増幅されやすい。その際バックグラウンドは顆粒状に出る。これはシグナル増幅の際 拡散がほとんど起こらないからである。問題なのは、本当のシグナルも顆粒状に増幅されるため、バックが高すぎるとシグナルと区別がつかなくなることだ。 従って、TSA使用時は通常の染色以上にバックグラウンドの低減に努める必要がある。
  我々の経験上、バックグラウンドの最大の原因となるのはTSA反応の直前のHRP抗体の濃度である。この濃度が高いと顆粒バックグラウンドがひどくて まともな染色はできない。TSAキットに添付のプロトコルには1:500で30分反応ということになっているが、この濃度で30分以上抗体を入れるとシグ ナルとバックの区別がつかないくらいひどい染色になることがある。ただし30分の抗体反応では感度に欠けるので、我々のプロトコルでは、anti- FITC-FRPの濃度を1:2000で、室温2時間以上〜4度overnightにしている。この抗体希釈率がTSA増幅成功の最大重要ポイントだと 言っていい。なお、4度で週末放置する場合は、バックグラウンドは上がるのでもっと希釈率を上げる(〜1:10000)必要があるかもしれない。
  ある論文では、ISHのプローブ濃度がcriticalだと記述しているものがあるが、恐らくそれよりもHRP抗体濃度の方が影響は大きい。ただし、 通常のハイブリ条件だとプローブ大過剰なので、10分の1程度のプローブ濃度にするとシグナルはそれほど下げずにバックを低減できる可能性はある。
  ISHの場合は、内在性のHRP活性がそれほど気にならないのでquenchingのステップを省略しているが、バックが気になる時は、1% H202/TBSで室温30分処理して内在性HRPをquenchingすると良いかも知れない。
  なお、目的としているシグナルが十分明るい蛍光を発している場合は、すでに必要以上に増幅している可能性があるので、TSA試薬を希釈するか、 反応時間を短くすると顆粒状のバックグラウンドは低減する。ただし、その際シグナルも低減するようだとSN比の改善はあまり期待できない。


・ TSAのシグナルが出ない。

TSAは非常に高価なのでついケチってしまうが、ケチりすぎるとまったくシグナルが増幅しなくなることがある。TSAによる増幅が不十分だと思われる場合 は、液量をふやすと良いかも知れない。
  TSAのシグナル増幅能にはめざましいものがあるが、SN比の向上という点から見ると実はそれほどでもない。上述の通り、顆粒状のバックグラウンドが 出るからである。我々の条件だと、シグナルがなくてもある程度は、顆粒状のバックグラウンドが出るはずなので、もしまったく顆粒状バックグラウンドが見え なければTSA増幅ステップを疑う必要があるが、バックグラウンドが見えるのにシグナルが判別できないときは、TSA法までの段階で十分SN比がついてい ない可能性が高い。


以上回答の文責 A.W.

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