DSLM vs 2光子 vs 共焦点の比較について 

(第3版 09.6.29 文責:野中)

3D、4Dイメージングにおいて観察方法を選択する一助になればと考え、当研究室が保有する顕微鏡についてその特徴をまとめてみました。筆者の勉強不足ゆえ間違いもあろうかと思います。snonaka
atnibb.ac.jp宛にご指摘ください。

DSLM

  • 他の2者に較べ圧倒的に明るい。励起光を試料の焦点面にしか照射していないため、対物レンズに入る光は散乱光を除きすべてがシグナルである。共焦点は焦点面以外から発せられた蛍光を捨てるという無駄遣いをしているし、2光子は蛍光を無駄遣いをしない点は良いが、励起効率の低さがネックとなる。
  • 他の2者に較べ実質的に高速である。ひとつの理由は点ではなく線で走査していること、もうひとつはやはり蛍光の無駄遣いがないことによる。現有の設備では実際に画像を撮りながらの最高速度は2.5frames/secとさほど速くもないが、これはカメラのデータ転送速度がボトルネックになっているためであり、露光時間は非常に短い(現在スピードアップを計画中)。一例として、GFPを発現した組織のXY画像を撮るのに必要な時間は50 msec程度で十分である。これは他の顕微鏡法では通常、S/N比を犠牲にしないと得られないスピードである。つまり高速で運動する生体試料のスナップショットを撮る上では大いに有利である。
  • 褪色・光毒性が少ない。蛍光を無駄遣いしないからである。タイムラプスで繰り返し撮影する実験ではこの特徴が生きてくる。
  • 深部を観察可能である。2光子の比較では、広い領域の像を撮るのに適している。実際のところ、ゼブラフィッシュやメダカのような比較的透明な試料ならば1mmくらいはいける。これら魚類の体幹部の深部イメージングではDSLMのほうが良好な結果を得ている。2光子は水と試料の間の微妙な屈折率の変化に弱く、一方DSLMは大きな影響を受けないせいではないかと推測している。
  • 励起光のライトシートは試料内に入ると屈折散乱を受けて理想的なかたちから崩れていき、蛍光も試料の奥から出てきたものほど不規則な屈折散乱を受けるため、2つの対物レンズから遠い(奥まった)位置の画像はシグナル強度と解像度がゆるやかに低下する。
  • 速い運動をしない試料ならば、これを回転させて様々な角度から撮影し、後から計算機上で合成することによってどの方向にも解像度の高い画像を得ることができる
  • 対物レンズを2つ持つため、光学系の調整が煩雑である。また、現有の設備では高NAの対物レンズを使うことが難しい。
  • 現有の設備では、試料は基本的にアガロースゲルに包埋する必要がある。立体像を撮るために試料を移動させねばならないからである。当研究室では複数のアプローチでこの問題に取り組んでいる。
  • 励起光を側面から入れるため、試料中の色素や油滴(屈折率が高い)の影になったところにむらが生じる。この問題の解決法として、UCSFのJan Huiskenは複数方向から光シートを照射する顕微鏡(mSPIM)を発表している。当研究室では画像処理によってむらを軽減する方法を試している。
  • いずれ市販されると見込まれているが、未だされていない。2009年6月現在、日本国内において研究者が自由に使えるのは当研究室のものだけのはずである。
  • 試料チャンバーの横から水浸ノーカバーレンズを挿入するかたちになっているため、観察しながらレンズを交換できない。原理的な難点ではなく、市販される際には解決されるのではないかと予想される。

2光子顕微鏡

  • 深部を観察可能である。生理研のトップデータでは約1mm、我々のセットアップでも数百μmはいける。
  • DSLMとの比較では、脳組織のような比較的透明度の低い試料を観察、高解像度で狭い領域を観察するのに適している。透明度が低くてもよいのは、生体組織の吸収が少ない近赤外光を使っていること、2光子吸収の起きる場所が励起光の焦点に限られていて、共焦点のようにピンホールを必要としないことによる。蛍光はたとえ散乱されていようが対物レンズに入ればすべてシグナルである。高解像度で狭いところによいのは、点走査であるためスピードには限界があること、一方で高NAの対物レンズを使えることによる。
  • 試料深部においては、シグナルはゆるやかに低下する。一方、解像度はあまり低下しない。2光子励起の確率は光子密度の2乗に比例すること、励起光はフェムト秒オーダーの超短パルスであることから、散乱によって位置やタイミングがずれた励起光はほとんど蛍光に寄与しないからである。
  • 共焦点に較べ褪色・光毒性が少ない。これもやはり、焦点でしか励起が起きないことによる。
  • 2光子吸収スペクトルは1光子吸収のそれを単純に2倍したものではなく、幅が広がる傾向がある。これによって、赤と緑のように蛍光波長の異なる蛍光色素を1波長で同時励起する多重同時染色が可能になる。この性質は、たとえば高解像度で分子の共局在を見たいときに重要である。なぜならどの波長の蛍光も同じ場所から出ていることが保証されているからである。共焦点による多重染色像ではレンズの色収差のため励起波長ごとに焦点位置が異なることを考慮する必要があるが、2光子ではその面倒がない。
  • 大変高価である。大雑把にいって共焦点システムの2倍の費用がかかる。また気温の変化や湿気に弱く、設置にあたっては空調の整備を必要とする。いずれも2光子励起用の超短パルスを発するチタン・サファイアレーザーが大変デリケートなせいである。近い将来、ファイバーレーザーなど別種のレーザーに置き換えられた暁にはこの面倒さは不要になると期待される。
  • 光路調整が煩雑である。これもチタン・サファイアレーザーの特性によるものだが、近年は自動化が進み、新しい製品ほどユーザーがやらねばならない調整は簡単になりつつある。当研究室のセットアップでは、慣れた人がやれば所要時間は30分程度で済む。
  • 解像度は1光子励起の顕微鏡に劣る。波長が2倍だからである。

共焦点顕微鏡

  • XY方向の光学解像度は2光子に勝る。DSLMに対しても、現有設備との比較だとNAの高いレンズを使える分有利である。
  • 当研究室では保有していないが、ニポウディスク方式、ラインスキャン方式など、いくつかの方法によって高速で画像取得できるものが市販されている。
  • 励起は焦点面以外でも起こっており、そこから出た蛍光は捨てられてしまう。つまり褪色や光毒性の悪影響が大きい。これは蛍光分子数の少ない小さな試料を観察するとき、生きた試料を長時間撮影するような場合、問題になる。
  • 深部の観察には向かない。50〜100μmを超えると、シグナル強度、解像度ともに急激に劣化する。